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最高裁判所第一小法廷 平成元年(行ツ)31号 判決 1989年11月30日

和歌山市西小二里一丁目四番二号

上告人

小原楠一

右訴訟代理人

水野武夫

増市徹

飯村佳夫

田原睦夫

栗原良扶

木村圭二郎

和歌山市湊通丁北一丁目一番地

被上告人

和歌山税務署長

中谷勝昭

右指定代理人

山口仁士

右当事者間の大阪高等裁判所昭和六二年(行コ)第一九号更正処分・過少申告加算税賦課決定処分取消請求事件について、同裁判所が昭和六三年一〇月二六日言い渡した判決に対し、上告人から全部破棄を求める旨の上告の申立があった。よって、当裁判所は次のとおり判決する。

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人水野武夫、同増市徹、同飯村佳夫、同田原睦夫、同栗原良扶、同木村圭二郎の上告理由について

原審の適法に確定した事実関係の下において、本件土地及び建物の譲渡について租税特別措置法(昭和五八年法律第一一号による改正前のもの)三五条一項の規定の適用はなく、上告人に対する本件各処分は適法であるとした原審の判断は、正当として是認することができ、原判決に所論の違法はない。論旨は、採用することができない。

よって、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 四ツ谷巖 裁判官 大内恒夫 裁判官 佐藤哲郎 裁判官 大堀誠一)

(平成元年(行ツ)第三一号 上告人 小原楠一)

上告代理人水野武夫、同増市徹、同飯村佳夫、同田原睦夫、同栗原良扶、同木村圭二郎の上告理由

原判決には、租税特別措置法(昭和五八年法律第一一号による改正前のもの。以下単に「措置法」という)三五条一項および同法施行令(以下単に「施行令」という)二三条一項の解釈・適用を誤った違法があり、右違法が判決に影響を及ぼすことは明らかである。

原判決は、右法令の解釈・適用にあたって、まず第一に、右法令の解釈自体を誤り、第二に、その結果、原判決が認定した事実関係のもとにおいては右法令を適用すべきであるのにこれを否定して法令の適用を誤ったものである。

以下、右の二点に分けて論述する。

第一 二棟の建物が一体として居住用建物といえるか否かについての解釈について

一 問題の所在と原判決の判示

1 居住の用に供されている二棟の建物があり、その内の一棟を譲渡した場合に措置法三五条一項の適用があるか否かについては、次の二つの類型がある。

第一は、その二棟の建物が一体としての一の機能を有する居住用建物といえる場合である(典型的な例としては、母家と離れがある場合など)。この場合は、居住用建物の一部の譲渡の問題となり、通達のレベルで言えば、租税特別措置法(所得税関係)通達(以下、「通達」という)三五-七を適用すべきか否かの問題となる。

第二は、その二棟の建物が各々独立して居住用建物の実体を備えている場合である(例えば東京と横浜に建物を有し、これを交互に居住用建物として使用している場合など)。この場合には、譲渡した建物が主としてその居住の用に供していたものか否かにより、施行令二三条一項の適用の有無の問題となる。

2 ところで、原判決は、本件において、上告人が右のうち第一の場合にあたると主張したのに対し、これを否定し、第二の場合にあたるとして上告人の請求を棄却したものであるが、その理由として次のとおり判示している(原判決が引用する第一審判決一八丁裏)。

<1> 両建物とも物理的には他とは独立した建物であること

<2> 両建物はいずれも、居間、寝室、玄関、台所、風呂及び便所を有していること

<3> 両建物の距離は五メートルは離れていること

<4> 両建物の敷地は隣接しておらず両建物間には公道に通じる幅約七〇センチメートルの通路及び第三者の居宅が存すること

右のように、原判決は、右の点を判断するにあたり、建物の構造、設備、両建物間の距離等、もっばら物理的客観的側面からのみ判断すべきものとする解釈を取ったのである。

ちなみに、原判決は、第一審判決を引用した右判示に附加して、「二棟以上の建物が合わせて一構えの家屋であると認められるか否かは、まずそれぞれの建物の規模、構造、間取り、設備、各建物間の距離等客観的状況によって判定すべきであり、当該個人及びその家族の使用状況等主観的事情は二義的に参酌すべき要素にすぎないと言うべきである」として、主観的事情も参酌するかの如き判示をしている。しかしながら、原判決は、主観的事情は「二義的」なものとしていること、右判示に続いて「右各事実「控訴人の主張一(二)(3)ないし(7)の各事実)が認められるからといって、甲建物と本件建物が合わせて一の居住用家屋を構成するものと認めることは出来ない」として、結局、上告人の主観的事情は全く考慮していないのであるから、原判決の趣旨が、物理的客観的状況のみで判断すべしとしているものであることは明らかである。

しかしながら、一体として一の機能を有する居住用建物であるか否かを判定するにあたっては、原判決のように、それぞれの建物の規模、構造、間取り、設備、各建物間の距離といった物理的状況によってこれを判断すべきものではなく、その者及び家族の建物の使用状況や建物への入居目的、生計の状況、家族構成といった事情を考慮に加えたうえで、一体として一の機能を有する居住用建物と言い得るか否かを総合的に判断すべきものである。

したがって、右の点において、原判決には、措置法三五条一項、施行令二三条一項の解釈・適用に誤りがあると言わざるを得ない。

以下、原判決の右解釈が誤りであることを明らかにする。

二 措置法三五条等の立法趣旨

措置法三五条一項及び施行令二三条一項の立法趣旨からすれば、次のとおり原判決の解釈が誤りであることは明らかである。

1 措置法三五条一項が、居住用財産を譲渡した場合に三、〇〇〇万円の控除を認めたのは、居住用財産の譲渡に対しては、一般の資産の譲渡とは異なった特殊な事情が存在することを考慮したものであるとされている。すなわち、居住用財産を処分するということは、当該居住者が自らの生活の拠点たる住居を失うことを意味するのであり、その結果、その者は当然処分した財産に代わる同規模の新たな居住用財産を取得する必要に迫られ、右処分によって得た代金をすべて新たな居住用用財産の取得費用に充てざるをえないことになるという事情があるため、居住用財産の譲渡による所得は一般の譲渡所得に比して担税力が弱いとして、三、〇〇〇万円の控除が認められているのである。

2 施行令二三条一項は、措置法三五条一項の適用を受ける「居住用家屋」の意義につき、「そのものがその居住の用に供している家屋を二以上有する場合には、これはの家屋のうち、そのものが主としてその居住の用に供していると認められる一の家屋に限るものとする」との規定を置いている。

右規定は、措置法三五条一項の前記趣旨を受けて、三、〇〇〇万円の控除が認められる譲渡の範囲を真に担税力なき譲渡に限定し、新たな居住用財産を取得する必要性を生じないような譲渡にまで右控除が認められる結果を防止しようとする趣旨に基づくものである。すなわち、居住の用に供している家屋を複数有している者が、その内の一家屋を譲渡したとしても、譲渡しなかった家屋の中にその者及びその家族の生活の拠点というに足りるものが存する場合には、その者は新たな居住用財産を取得する必要に迫られないのであるから、このような場合にまで三、〇〇〇万円の控除を認めることは、措置法三五条一項の趣旨に背馳する結果を生ずるとして、本規定が置かれているのである。

3 右の趣旨からすれば、ある者が居住の用に供する家屋を物理的には二棟有している場合に、これが施行令二三条一項の「居住の用に供している家屋を二以上有する場合」に該当するのか、それともこれに該当せず両家屋を合わせて一体いとして、一構えの家屋を有していることになるのかを判定するにあたっては、その内の一棟を譲渡することによって、新たな居住用財産を取得する必要に迫られる結果になるか否か、担税力なきところに税を課さずとの理念に合致するか否かという点に留意する必要がある。そして、右の点に留意したうえでその判定を行なうためには両建物の使用状況、使用目的、居住者の家族構成等の諸事情こそが重要な判定要素とされるべきなのである。

4 以上のとおりと、措置法三五条一項及び施行令二三条一項の立法趣旨に照らせば、二棟の建物が一体として居住用建物といえるか否かについて建物の物理的状況によってこれを決するものとする原判決の前記解釈が正当とはいい得ないことは明らかである。

三 通達の内容

原判決の解釈が誤りであることは、通達の内容に照らしても明らかである。

1 通達三五-二は、「措置法第三五条第一項に規定する『その居住の用に供している家屋』とは、その者が生活の拠点として利用している家屋(一時的な利用を目的とする家屋を除く。)をいいこれに該当するかどうかは、その者及び配偶者等(社会通念に照らしその者と同居することが通常であると認められる配偶者その他の者を言う。以下この項において同じ。)の日常生活の状況、その家屋への入居目的、その家屋の構造及び設備の状況その他の事情を総合勘案して判定する。(後略)」との解釈基準を示している。

2 右通達は、居住用建物に該当するか否かを判定するには、居住者及びその家族の日常生活の状況や建物への入居目的その他の事情を総合的に考慮すべきものとしている。そして、二棟の建物が一体として居住用建物といえるか否かの判定は、二棟の建物について、それらが一の居住用建物に該当するか否かを判定するものであるから、その判定基準は、結局、居住用建物への該当性を判定する前記通達の基準と異なるものとはなり得ないのである。

3 言うまでもなく、通達は、行政庁内部の解釈基準を示したものにすぎず、直接国民の権利義務を拘束するものではない。しかしながら、右通達が長年の間、課税当局の解釈基準として用いられ、定着してきていることに鑑ると、少なくとも、右通達の趣旨と全く異なる原判決の前記解釈が正当性をもたないことは明らかである。

四 課税当局の解釈

原判決の解釈は、課税当局側が、従前とってきた解釈とも異なるものである。

1 甲第三号証の二、甲第四号証の二、甲第五号証の二及び甲第三〇号証は、いずれも課税当局の担当者の執筆に係る文献であり、課税当局側の解釈を示したものと解されるところ、甲第三号証の二には、次のような記載がされている。

「その者が二以上の家屋を有するかどうかは、物理的に二棟の建物を有しているかどうかにより判定するものではありません(措令二三<1>、二四の二<4>)。

その有する二棟以上の建物が隣接しており、かつ、これらの建物の構造、設備もしくは規模、家族の構成若しくはその生計の状況またはこれらの建物使用状況その他の状況からみて、その二棟以上の建物が一体として一の機能を有する一構えの家屋と認められる場合には、その二棟以上の建物は「一の家屋」に該当します。」

2 右の解釈、すなわち、その者が二以上の家屋を有するか否かの判定については、

<1> 物理的に二棟の建物を有しているかどうかにより判定すべきもきでないこと、

<2> 建物の構造等のみならず家族の構成、生計の状況、建物の使用状況等により判定すべきこと、

については、甲第四号証の二、甲第五号証の二、甲第三〇号証においても同様の記載があるのであって、これは、課税当局側の確立した解釈なのである。

3 課税当局が右のような解釈をとってきたものであることは、他ならぬ国税不服審判所長による本件の裁決の理由からも明らかである。

すなわち、右裁決は、次のように述べている(乙第三号証九丁、一〇丁)。

「原処分庁は、甲家屋及び乙家屋は、構造上独立した家屋であり、二棟の建物が一体となって一構えの機能を有していたとは認められず、また、このことはその家屋の利用状況によって左右ささるものではないと主張するが、前記認定事実によれば、乙家屋は、構造上は独立した家屋といえるが、実質的には生活の本拠である甲家屋に付随する子供部屋として機能し、甲家屋と一体となって居住の用に供されてきたと認めるのが相当である。」としたうえ、通達三五-七の適用の有無を検討しているのである(なお、「甲家屋」とは原判決でいう「甲建物」であり、「乙家屋」とは原判決でいう「本件建物」である)。

右のように、課税当局の法令解釈に拘束される(国税通則法九九条参照)国税不服審判所長の裁決が、「家屋の利用状況によって左右されるものではない」とする原処分庁の主張を却け、家屋の利用状況によって本件建物が一体となっ居住の用に供されてたきたものと裁決したことは、課税当局の担当者の前記著述が、課税当局のこの問題についての確立した解釈であることを裏付けるものである。

4 ところが、原判決は、明らかに右と異なり、一体として居住用建物か否かを判断するにあたっては、物理的状況によりこれを判断すべきであるとしているのであって、これが課税当局側の解釈と異なるものであることは明白なのである。

五 課税当局の従前の取扱い

原判決の解釈を前提とすれば、従前の課税当局の取扱例とも異なることになる。

1 一室では手狭なため同一のマンションの二室を購入し、これを家族が一体として居住の用に供している場合に、従前、課税当局においては、これらは一体としての一の機能を有する居住用建物と取り扱われてきた。このことは、課税当局の担当者が執筆した甲第二九号証の記述からも明らかである。従って、この二室を一括して売却した場合に、その全体について措置法三五条の適用を認めた実例は、従前からかなり多数存在するのである。

2 ところで、甲第二九号証のケースを原判決の解釈基準にあてはめた場合には、課税当局の従前の取扱例とは異なり、施行例二三条一項の、「居住用家屋を二以上有する場合」にあたることになる。

すなわち、原判決の前記解釈基準によれば、

<1> 右マンションの両室は、区分所有建物でありいずれも玄関扉(場合によれば門扉)を有する独立した居住用家屋である。

<2> 右両室は、いずれも居間、寝室、玄関、台所、風呂及び便所を有している。

<3> 右一室から他の一室へ行くためには、通路を通り、階段またはエレベーターで移動し、再び通路を通らねばならず、その距離は少なくとも五メートル以上はあり、かつ、通路には数室の第三者の居宅が接している。

とういうこととなり、右両室は別個独立した居住用家屋であると認めるの相当である、ということになる(原判決が引用する第一審判決一八丁表、裏参照)。

3 右のように、原判の解釈基準によれば、従前、課税当局により一体としての一の機能を有する居住用家屋として取扱われ、かつ、その実例も多数存するマンションの二室の例(甲第二九号証の例)でさえ、これが否定されることになるのである。従って、万一、原判決の前記解釈が御庁によって認められるようなことになった場合には、課税当局は、通達の改正の必要を迫られ、かつ、従前の取扱いを変更しなければならない事態となるのである。

五 結論

以上のとおり、二棟の建物が一体として一の機能を有する居住用建物と言いうるか否かに関する措置法三五条一項、施行令二三条一項の解釈についての原判決の判示は、これら法令の立法趣旨を没却し、通達の趣旨に反し、かつ、課税当局の従前の取扱いにも背馳する何ら根拠のない独自の見解というほかなく、到底正当とは認め得ないのである。

原判決に法令の違背があることは明白である。

第二 本件における措置法三五条一項の適用について

一 本件において、原判決が認定した事実を前提にすれば、本件には措置法三五条の適用を認めるべきである。

二 原判決は、第一審判決を引用し、同判決が認定した左の事実を認定している。

1 上告人は建具職人であり、その妻及び子供三人の合計五人で甲建物に居住していたこと、

2 甲建物の床面積は四五・七二平方メートルでその間取りは台所四畳、和室六畳、食堂兼居間兼寝室五畳、和室三畳であったが、子供らの成長に伴い家族五人が居住するには甲建物は手狭になってきたため、上告人は、甲建物から約五メートル離れた所にある本件土地建物を買い受けたこと

3 以来本件建物は子供達の勉強部屋兼寝室として甲建物と共に原告およひその家族の居住用家屋とて使用されてきたこと

三 さらに、原判決は、右に附加して「控訴人の主張1(二)(3)ないし(7)の各事実がおおむね認めれる」として、次の事実を認定している。

1 甲建物は六畳の和室、五畳の食堂兼居間兼、寝室、三畳の和室及び四畳の台所からなり、昭和四九年に上告人が本件土地建物を取得するまでは、上告人とその妻及び三名の子(当時、長女が一八才、二女が一五才、長男が一三才)は甲建物に居住していた。

2 本件建物を取得した当時の甲建物の使用状況は、六畳の和室には間ダンス、五尺ダンス、整理ダンス、仏壇及び鏡台が置かれており、同室には上告人一人が就寝するだけの空間しかなく、五畳の食堂兼居間兼寝室には勉強机、茶ダンス、テレビ、整理ダンス及び水冷クーラーが置かれていたため、残りの空間で三名の子が重なり合うようにして就寝し、上告人の妻は、右和室と食堂兼居間兼寝室を仕切る襖を取り払って右両室の境目付近で就寝し、三畳の和室には勉強机二個とオルガンが置かれ、台所には流し、水屋、サイドボード、冷蔵庫等が置かれ、甲建物のどこにもゆとりはなかった。

3 上告人は、子らが成長するにつれ、甲建物では十全な家庭生活を営むことができなくなったので、生活の本拠たる建物を拡張することを目的として、前記のとおり本件土地建物を取得したもので、その意図は右両建物を一体として生活の本拠とすることにあった。

4 本件土地建物購入後の上告人ら家族の建物使用状況は、本件建物の六畳、四・五畳及び三畳の各和室は三名の子らの勉強部屋及び寝室として使用し、甲建物は上告人夫婦の寝室、家族全員の食堂及び居間として使用していた。三名の子らは、甲建物で上告人ら夫婦と共に食事をとり、甲建物の風呂で入浴し、パジャマ姿のまま甲建物と本件建物間を行き来し、上告人の妻は、夕食の用意ができると、甲建物の勝手口から本件建物にいる子らを呼んでいた。

5 上告人は、昭和五七年に本件土地建物を売却し、その代わり甲建物に隣接する乙土地建物(一審判決添付の物件目録三記載の土地建物)を購入し、両建物の間の壁の一部を取り除いて、両建物を一体のものとし使用している。そして、上告人は、乙建物を購入後右建物改造工事をする間、甲建物だけでは十全な生活ができないので、本件建物を借りて従前の生活を維持していた(すなわち、右譲渡の前後を通じて上告人らが甲建物のみで家族生活を営んだことは全くなかった)。

四 以上のとおりの原判決認定にかかる事実関係の下では、措置法三五条一項の趣旨に添った解釈を行う限り、甲建物と本件建物とは、それぞれの構造、設備、機能、両建物の位置関係、両建物に居住する家族の構成、生計の状況、両建物への入居目的、両建物の使用状況その他の状況を考慮のうえ、両建物が一体として一の機能を有する一構えの居住用家屋であると当然認められるべきものであり、措置法第三五条一項の適用が認められるべきである。

五 しかるに、原判決は、措置法三五条、施行令二三条の解釈を誤った結果、右のような事実認定を行ないでから同法の適用を認めなかったのであって、これが法令に違背することは明らかなのである。

第三 結論

以上のとおり、原判決は、措置法三五条、一項及び施行令二三条一項について、右法令の立法趣旨を無視したうえ、通達並びに課税当局の解釈にも背馳し、更にこれまでの課税実務の取得例と正反対の甚だしい解釈の誤りを犯したものであり、かつ、この誤った解釈に基づいて右法令の適用を行った結果、原判決認定の事実関係のもとでは、当然に一体として一の居住用家屋と認められるべき甲建物と本件建物とを二個の居住用家屋であるとして措置法三五条一項の適用を否定するという誤った結論に至ったものである。

右法令の解釈・適用の誤りは明白、かつ重大であり、かつこれが判決に影響を及ぼすこともまた極めて明白であるから、原判決は直ちに破棄されるべきである。

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